建設費高騰で再開発中止が相次ぐ今、住宅購入は“待つ”より“動く”が得策？｜横浜・川崎の不動産はリアルパートナーズ

建設費高騰で再開発中止が相次ぐ今、住宅購入は“待つ”より“動く”が得策？

2025-07-18

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資産コンサルチームの不動産コラム
建設費高騰で再開発中止が相次ぐ今、住宅購入は“待つ”より“動く”が得策？

2025年に入り、首都圏を中心に複数の再開発プロジェクトが、建設費の高騰を理由に白紙化または延期となる事例が相次いでいます。
中でも大きな注目を集めたのが、東京都中野区における「中野サンプラザ跡地再開発計画」の中止です。

当初、約2,639億円とされていた本事業は建設費の高騰により約900億円の追加費用が必要となり、事業継続が困難と判断され、2025年7月に計画が白紙化されました。

また、東京・五反田のランドマークである「TOCビル」建て替え計画も建設コストの見通しが立たず、当初予定されていた2028年竣工が延期となり方針を「既存ビルのリニューアル」へと転換。新たな建て替え着工は2033年ごろを目指す見通しとなりました。

神奈川県内においても例外ではありません。横浜市港南区の市営野庭住宅建て替え事業では、2025年7月に行われた入札において全社が辞退し事業は一時中止に。全国的な建設費の上昇により、事業者が採算確保は困難と判断したと見られています。

これらの事例は、再開発や大型建築物に限らず、今後の戸建住宅や中低層マンションの価格にも影響を及ぼす重要な兆候といえるでしょう。

こうした建設事業の中止や延期の背景にある「建設費の高騰」は私たちが住まいを購入する際にも大きな影響を与えています。その主な要因は以下の3点です。

① 資材価格の上昇

木材、鉄骨、コンクリートなどの主要建築資材が世界的に値上がりしています。
コロナ禍以降の供給制限や物流費の増加に加え、円安の影響によって輸入資材の価格も急騰。
特に木造戸建住宅に使用される構造材（柱や梁）、合板、断熱材などは軒並み高騰しており、建築コスト全体に大きく影響しています。

② 人件費の上昇
建築現場では深刻な職人不足が続いており、人件費の上昇も避けられません。
特に木造建築に携わる大工職人は高齢化が進み、若手の担い手も不足しているため、都市部を中心に人材確保競争が激化。結果として、1件あたりの施工費用が従来より大幅に上昇しています。

③ 法規制・省エネ基準の強化
2025年度からは、住宅における省エネ性能の義務化が段階的に進み、川崎市や相模原市では新築住宅への太陽光発電パネル設置が義務化されるなど、法的要件のハードルが上がっています。
これにより、今後の新築住宅は性能面での基準強化が求められ、結果的に建築コストも一段と高くなる見通しです。

以前は「建設費の高騰＝大規模マンションが対象」といった認識が一般的でしたが、現在では新築戸建や注文住宅でも建築コストの上昇が価格に反映され始めています。
特にZEH基準や長期優良住宅仕様など、性能面に優れた物件ほど、建築費の上昇により価格が高止まりする傾向が強まっています。

加えて、住宅ローン金利についてもわずかずつ上昇傾向にあり、これまでのように「待てば安くなる」という従来の常識は、もはや通用しない時代となりつつあります。

そのような状況下でも、すでに建築が進んでいる物件や、以前に土地を安価に取得していた事業者による住宅は、建築費高騰の影響を価格に転嫁していないケースも一部存在します。

つまり、現在市場に出ている一部の新築戸建や分譲住宅は、「将来的に同じ仕様で建てれば確実に今より高くなる」可能性が高い中で、今だからこそ購入できる価格で提供されている場合があるのです。

今回ご紹介した中野サンプラザ、TOCビル、野庭住宅のような事例は様子を見ることでかえって住宅取得コストが上がるという可能性を示しています。

今後、建築費や人件費がさらに上昇すれば、同じ立地・同じ広さの住宅でも、数百万円単位で価格が変動するリスクがあります。
さらに、土地の仕入れ価格自体も上昇傾向にあり、物件の供給数が減少する懸念も否定できません。

中野サンプラザ再開発の白紙化は、決して都心だけの問題ではありません。
建設費の高騰は、川崎市・横浜市といった地域の住宅市場にも、確実に波及しています。